今回は、「今日は心のおそうじ日和(素直じゃない小説家と自信がない私)」という本の読書感想を書いてみました。
家事が好きな人や、家事をしなきゃいけないけれどちょっと面倒、最近気持ちがモヤモヤしている・・・という人に、おすすめの一冊です。
【今日は心のおそうじ日和(素直じゃない小説家と自信がない私)】について
あらすじ
突然終わった結婚生活。バツイチか──と嘆く余裕もない私。職務経験もろくにないが、家事だけは好きだった。
そんな私に住み込み家政婦の仕事が舞い込む。相手は高名な小説家。そして整った顔立ちとは裏腹に、ものすごく気難しい人だった。行き場のない私と、ふれ合いを拒む小説家。最初はぎこちなかった関係も、家事が魔法のように変えていく。彼と心を通わせて行くうちに、いつしか──。
なにげない毎日が奇跡になる物語──本を閉じた後、爽やかな風を感じてください。
引用:amazon商品紹介ページより
作者
作者:成田 名璃子
感想
家事=心を整えること
主人公の涼子は家事が得意な専業主婦。外で働く夫と、一人娘の美空との三人暮らし。物語はいきなり離婚する場面から始まります。
夫から専業主婦であることを望まれて、一心に家のことを切り盛りしてきたのに、働かない女に価値はないと夫に切り捨てられる。しかも夫は不倫までしていて、相手はキャリアウーマン。夫からことあるごとに他の女性と比較され、けなされて。涼子が自信を喪失していく過程を思うと胸がキリキリしました。
涼子が夫の心をつなぎとめようと必死に頑張っていた家事は、夫にしてみたら「誰にでもできる価値のないこと」
けれど、家事をすることは、涼子にとっては自分の核とも言える大事なこと。自分の心を整える手段は人それぞれだけれど、涼子は家を整えることで心も整えていきます。
悲しいときも、落ち着かないときも、体を動かして家を隅々まできれいにして暮らしを守ること。家事は手間をかけずにさらっと済ませることもできるけれど、心の曇りを拭い去るようにひとつひとつ丁寧に。
涼子が家のなかをせっせと片付け、磨き上げていく過程は、読者の心にも風を通してくれるような爽快感があります。掃除をした後の充足感、片付けを終えた後の開放感。そういったものを呼び起こし、不思議と自分も家事をしたくなるような気分にさせてくれます。
自分をぞんざいに扱わない
夫から心理的な圧迫を受け続けた結果、涼子は自分自身を何のスキルもない無価値な人間だと卑下するようになってしまいます。
他人と比較し、自分を見失いかけていた涼子を救ってくれたのは、周囲の人たちでした。
”家事しかできない”と嘆く涼子に、雇い主は”家事ができること”の強みを伝え続け、そして家事をしてくれることへの感謝をまっすぐに示してくれます。
今まで、専業主婦として当たり前にやってきたことに対し、労働に見合った正当な対価を支払われ、家事スキルを認めて感謝されることは涼子にとってはじめてのことでした。
自分は無価値ではないし、自分のやっていることは誰かにとって必要とされる価値のあること。涼子は自信を取り戻し、等身大の自分を見つめて受け入れられるようになっていきます。
周囲の人たちの優しさに背中を押され、顔を上げて新しい道へ踏み出していく涼子の姿は、たぶん多くの読者が勇気をもらえるのではないかなと思います。
家事がしたくなる、かも?
大掃除や片付け特集などをテレビで見ると、自分でもやりたくなることありませんか?
この小説も同じで、家仕事に取りかかりたくなるような、そんな意欲を引き出してくれる本です。大掃除とまではいかなくても、不要品をまとめたり、シンクを磨いてみたり。面倒で先延ばししていたちょっとした家事に手をつけてみようかなと思わせてくれるような、そんな読後感があります。
家事が好きな人にはもちろん、家事をしなきゃいけないけれどちょっと面倒・・・という人にも、おすすめできる一冊です。
